家族信託の紛らわしい制度
家族信託の紛らわしい制度
「遺言信託」、「後見制度支援信託」― 家族信託と似ているが…
家族信託のうちで、気になる点、家族信託と似ているが異なる制度、紛らわしい制度として、「遺言信託」と「後見制度支援信託」をご紹介します。
○「遺言信託」について
「遺言信託」について
「遺言信託」について
信託銀行等で、「遺言信託」を勧められることがあります。
これは、信託銀行等が(1)遺言書の作成支援、(2)遺言書の保管、(3)遺言の執行を業務としたサービスを指します。
この「遺言信託」は、家族信託とは全く異なっています。
それとは別に、遺言を使って信託を設定する方法を「遺言信託」ということがあります。
紛らわしいのでここでは、「遺言による信託」と表現します。
「遺言による信託」は、財産所有者(本人)が遺言書に信託の内容を記して、信託の効力をもたせる方法です。
この方法では、本人が単独で内容を決めており、本人死亡後、どこまで受託者、受益者に、相続人にその意思が伝わるか、不確かな点が残ります。
そこで、もう一つの制度として、「遺言代用信託」があります。
これは、財産所有者(本人)が遺言を残すわけではなく、信託契約によって受託者に財産を信託譲渡し、本人(委託者)自身が生前中は第1次受益者として、死亡後は本人の配偶者や子供などを第2次受益者とすることで、遺言と同様の効力が発生する信託をいいます。
なお、「遺言による信託」と「遺言代用信託」は家族信託の一つの形です。
○「後見制度支援信託」について
「後見制度支援信託」について
「後見制度支援信託」について
金融資産の所有者(本人)に成年後見人をつける必要があるときに、信託銀行や家庭裁判所で、「後見制度支援信託」について説明を受けることがあります。
「後見制度支援信託」は、本人(被成年後見人)の金融資産を後見人の使い込みから守るために、成年後見人の管理の範囲を、日常的な支払に限定し、残りの金融資産を信託銀行等に信託する仕組みです。
日常的な支払以外でお金が必要な時は、そのたびに成年後見人は、家庭裁判所にお伺いを立てて(報告書を提出)、家庭裁判所から許可がおりた(指示書を発行)後、信託銀行から成年後見人にお金が支払われます(一時金の交付)。
日常的な支払以外とは、例えば医療費、自宅改修費用、施設入居費用などが想定されます。
また、この後見制度支援信託を利用する場合は、成年後見人への報酬に加え、信託銀行に対しても報酬を支払う必要があります。
後見制度支援信託は、信託銀行、家庭裁判所のアドバイスをよく聞き、よく考えた上でお決めになってください。